【AVマイ相】『痴漢列車♡素人リーマン朝採れ生絞り』

hrakマイ相

 

 

 

 

手早く撮影を終え俺達がするのはそう、逃走。車掌や駅員に見つかっちゃやべェのでクルーもカメラを鞄に隠し、エキストラも普通の乗客のふりしてサーッとホームに散る。俺もスタッフの後について足早に駅の出口に向かった。スタッフの誰かが駅の前まで車を回してくれている筈だからだ。ところが視界の端で駅のトイレに向かった背中が見えた。

「大丈夫か?」

俺の声に、個室に入ろうとした相澤は振り向いた。俺の存在に特に驚きも喜びもしない、素っ気ない顔で。

「…慣れてる。先に戻ってていい」

共演した男に心配されるってこと、それ自体が不快なのかもしれない。奴は口数少なく答えると個室のドアを閉め、籠もった。恐らく腹の中に出された精液を掻き出すために。
相澤が望んでいるであろう通りに一人車に向かっても良いが、俺の足は不思議とこの郊外の駅の公衆便所のすすけた床に張り付いてしまう。無意識に耳を澄ませていると、クチュ…と微かに湿った音が聞こえた。相澤が自分のソコに指を入れ、中の精液を掻き出している気配。精液…俺の、だ。
そう思ったら3発出した筈なのに、急にチンポの付け根が疼いた。相澤のケツは正直すごく、ヨかった…。男の尻にナマで入れるのなんて絶対御免だと思っていたが、ゴム有りで最初の射精を終えた俺の頭からはそんな気持ちもなくなっていた。女の柔らかさとは違う、鍛え上げられたむっちりとした尻肉。突っ込めば根元がヒリつきそうな程キツく締め上げられ、窮屈な粘膜はぬろりと蠢いて俺のカリを摩擦し、亀頭を締め上げてくる。クセになる、貪欲で、最高に刺激的な穴。男に喘がれたら絶対萎えるだろうなと思っていたがそれもそんなことはなく、苦悶の顔で快楽に耐え、段々エロくなる相澤の姿は想像以上にキた。

(バイだったのかよ?俺…)

元々そうだったのか、新しい性嗜好が花開いちまったのか。いずれにしても自覚したくなかった事実に、天を仰いだ。石造に白いペンキを塗っただけの簡素な天井が俺の困惑の眼差しを受け止める。個室の中の相澤はもう俺が出て行ったと思ったんだろう、はァ…、と小さく溜息を漏らした。空気に融けた微かなそれを、耳のいい俺はキャッチする。続いて何かが規則的に擦れる音。よく聞き覚えのあるパターンの音だ…そう、家で自慰をする時なんかに。

「は………っ………」
(こいつ、オナニーしてる?)

漏れ聞こえた低いやらしい呻きに、俺は耳をそばだてる。撮影で2発出したのに、元気なこった…俺も人のこと言えねェけど。中に出された精液を掻き出すうちに昂ぶっちまったのかもしれない。竿を擦る微かな音が速さを増す。こく、と急いて唾を飲む音が聞こえた。男の自慰を盗聴する趣味はないが、沸いた強い関心と緊張感に首後ろがソワソワする。

「っ……ぁ……、……」

控えめな低い喘ぎを喉から漏らし、相澤は射精したらしい。すぐにペーパーホルダーが回るカラカラと忙しない音が聞こえてくる。手つきが焦ってるように感じるのは気のせいか?思ったよりたっぷり出ちまったとか?俺が個室のドアの向こうに想像を膨らませていると、水が流れる音がする。処理が終わったらしい。…ということはつまり。

「…いい趣味だな」

ドアが開き、怖ェ顔がジロリと逃げ遅れた俺を見る。自慰を聞き耳したことへの皮肉。目が合った瞬間の奴は流石に少し動揺したようだったが、すぐに表情をかき消した。

「まだ火照ってんならお相手するけど?」
「いい…もう済んだ」

冗談は無愛想に打ち返され、話の尾が萎む。相澤は俺に目を合わせず、手を洗い始めた。
…照れてんの、カナ?演技じゃなくこいつが感情を露わにするのはまだ見てない。だから何だって話だが、無意識に横顔を盗み見ていると、洗った手の水気を適当に払った奴がもう一度こっちを見た。呆れた目で。

「あんた男女もの専門って聞いてたが…ゲイなのか?」
「いいや、違うケド…」

俺の視線そんなに熱烈だったか?俺はなんとなく口ごもってから、俺の周りにあんまりいないタイプだからさ、と適当なことを呟いた。その言い訳みたいな響きの言葉に、相澤の眉が不可解げに寄る。特にそれ以上の追及をするほどの気力も興味も無いようで、話はそれで終わった。ただ。

「そうか。…俺もゲイじゃない」

一言の、思わぬ暴露。

「へ?」

相澤はそう言い残し俺の横をすり抜けて行ってしまった。ゲイじゃない…ってじゃあなんでこんな仕事してんだ?俺の頭ン中は疑問で一杯だったが、素っ気ない背中を慌てて追うしかなかった。

『俺もゲイじゃない』

そっけない視線と愛想のない低い声が何度か頭をよぎる。
都市部に戻る車内では助手席に座る監督が急遽代打で参加した俺をねぎらうつもりなのか、愛想よく話を振ってくれた。俺はそれに受け答えしながら、隣に座る相澤を見る。案の定、腕を組んでもう寝ちまっている。さっきの気まずい1シーンがあった直後にそんなに朗らかに話せるとも思わないけど。

(なんだかなァ…)

ま、俺だって普段撮影終わったあと女優とまったり喋ることは少ない。だが、もう少し共演者としての愛想はねェのか?
いや、共演者といっても素人サラリーマンの痴漢モノだけどサ!…そこまで考えて、俺はどうやらこいつととっても喋りたいらしいと気付く。さっきの『ゲイじゃない』発言も気になるが、何でもいいのでもっとコミュニケーションを取りたかった。分かりそうであと一歩掴めないこいつと、車が到着して解散に至る前に。

「相澤くんなら話しかけると起きるよ。熟睡してる時は何しても起きないから気にしなくて大丈夫」

俺が隣をじっと見てることに気付いたのか、たまたま振り向いた監督が明るい声でそうアドバイスをくれた。俺が第一声を頭の中で探していると、車がもう少しでAV制作会社に着く、ってとこで相澤は自然と目を開けた。

「なんだ」
「あ…ハヨ」

相澤はくあ、とあくびをする。尖った犬歯の裏を見ながら、歯並びは案外いいな、とどうでもいい感想を抱く。撮影はずっとバックだったしキスもしなかったからな…。
俺が見ていると、眠たげな目線が不機嫌そうにこっちを向く。

「なんか用かよ。さっきから人の顔をジロジロと」
「飯でも食っていかね?この後ヒマだったら」
「悪いな、仕事がある」
「仕事ォ?!もう一本撮影ってこと?」

あんな俺にケツ掘られた後にか、と内心驚いたが、面倒そうに首が振られる。

「本業の方。今繁忙期なんだ」
「本業?」

ジトリと面倒そうな一瞥。成る程、答える気はないってね。しかし本業があって、『ゲイじゃない』のに、この仕事を続けてるって事?
ますます謎が増えて、興味が湧くぜ…ミステリアスな男だ。フロントガラスに会社の社屋が見え、俺は少し早口で尋ねた。

「そういや下の名前なんつーの」

相澤の下の名前を知りたかった。知ったからといって何になる訳でもないが、なぜか無性に。奴はそれについては教えても構わないと思ったようで、街頭のライトを乗せた猫みたいな目を俺を向けて答えた。

「消太」
「しょうた?どういう字」
「消すに太郎」
「フーン変わった漢字だな面白ェ」

もう話は終えたという態で車の停車を待っている相澤の横顔を見ながら、名前の響きを頭の中で反芻する。消太、しょうたか…。俺と同じ歳の、くたびれた男の名前にしては随分…。

「カワイイ名前だな?」

返ってきたのはなんとも言えない渋い表情。なんとも言えないせいか、変わりにムゥと下唇が突き出す。大の大人が同性に名前が可愛いなんて褒められても、そりゃ嬉しくね~よな。分かっちゃいるけど思ったままを言いたかったし、このふてくされた反応を俺はなんだか気に入った。くっくと腹から笑いがこみ上げてくる位に。

「消太く~ん、って呼びたくなる」
「なんだそりゃ。幼稚園の先生かお前は」

俺の中のとびきり優しい間延びした声を出すと、そんな言葉が返ってきたから驚いた。本人はなんの意識もしてねえんだろうが。

「…おまえは。下の名前」
「俺?ひざし」
「山田ひざし」

無関心そうなこいつにまさか名前を聞いてもらえるとは思わなかったからこれもちょっとしたサプライズだったが、俺が答えると相澤は確かめるように繰り返した。俺が生まれた7月7日がまばゆいサニーデイだったから親父が付けた名前。ニッと笑って相澤に、イエス、と答えると、納得したように頷きが一つ返る。ちらりと俺の碧の目にぶつかる澄んだ両眼。黒目は小さく動きは少ないが、じっと見ていると案外素直に感情を表していることに気付く。

「合ってる」

相澤はそれだけ言うと、もう俺に目を合わせることなく鞄を掴んでドアを開けて降りていった。いつの間にか車は会社の前で停車していた。
相澤は監督に、お疲れ様です、と会釈をして踵を返すとさっさと行っちまった。

(……人恋しい季節だからかなァ)

師走の寒風がすーっと胸を通り抜けた気配。物寂しさ。今まで名前すら知らないまま一夜を共にしてそれきりの女だって数え切れない程いるのに、この気持ちは何だろうねえ。
『相澤消太』は地下鉄の入り口に潜り込んでしまったのか、もう跡形もなく姿を消していた。

 

 

 

 

メリー・クリスマス?

 

 

 

 

「しょーた!今日はどうして泣いてんのかな~君は?」

ひざしはフローリングの上で転がって泣いている男児…自分の担当するもも組の翔太(5歳)の元へしゃがみこむ。嗚咽を漏らす小さな顔は真っ赤だ。

「…飴が…ぼくのより、リンちゃんの方が、ぅっ、長かった…」

先ほどのクリスマス会で園児達に配られたクッキーと杖の形のキャンディ。喧嘩にならないよう細心の注意を払って同じ色形のものを配っているので誰かの飴だけが長いということはあり得ない筈だが、それを説いても彼の嗚咽は止まないだろう。翔太は子どもの歯が抜けぽこりと小さく凹んだ歯茎をさらし、また大きく泣き声をあげた。

「あーよしよし…お前はもう…」

ひざしは彼を抱き上げると、エプロンをつけた胸であやしてやる。ひざしは都市の幼稚園で一クラスを受け持ち、また週に1回園児達に英語を教える保育士だった。

「マイクせんせえ、仮面ライダーギオウ弾いてくれる?」
「いーよォこの間練習したもん。俺の超絶技巧見せてやるぜー!翔太は歌って?」
「うん、うたう-!」

腕の中でやっと笑った男児にひざしは笑顔を返すと、彼を連れて大部屋の隅のピアノに向かった。ひざしは英語を教えるためにマイクと名乗っており、園児も保護者もひざしの本名は知らなかった。

「そうなの、マイク先生にライダーのお歌弾いて貰ったのね」
「うんー!」

午後、他の保護者同様、幼稚園に迎えにきた母親に翔太が丸い顔を持ち上げて話している。二十代半ばの彼女は派手ではないが、いつも丸みを帯びた爪先に艶やかな色を乗せ綺麗に整えている。

「マイク先生、いつもありがとうございます」
そんな彼女の爪先がマイクの胸元に差し出された。今日は雪の結晶と雪だるまの描かれた、子どもも喜びそうな冬のネイル。その下にぶら下がる紙袋。

「クリスマスなので…これ、あの、…個人的に」

ひざしが受け取って中を覗くと、高級チョコレート店の横長の箱が収まっていた。品良くリボンをかけられたその中身は恐らく、ハートのチョコレートや甘く濃厚なトリュフ。ひざしがあと二ヶ月もすればふたたび大量に受け取るであろうほろ苦い洋菓子たち。

「わざわざスンマセン!高いトコのじゃないッスかこれ~…!ありがとうございます、職員みんなで頂きますね」

色気なく、明るく。みんなで、というのを心持ち強調して笑顔を返すと、彼女の顔は少し曇った。

(保護者は勘弁…)

とにかく、ひざしはよくモテた。幾度かの失敗つまり刃物飛び交う修羅場などを乗り越え、三十の今は危機回避のためにそつなく立ち回れる男になっていた。保育士の傍ら、月二本程度AVに出るのも見目も肉体も相応に魅力的な女を後腐れ無く抱ける、というのが理由の一つだ。

「翔太、おうちでクリスマスのお手伝いちゃんとすんだぞ?」
「は~い!マイク先生もだよー!ケーキは『じょうず』に切らないとだめなんだからね!イチゴを落っことしちゃだめだよ」
「はは、OK。じゃあな~」

毎年クリスマスケーキを切るという大役を任されているらしい教え子の無邪気な言葉に笑い、母子の背中を見送る。仮面ライダーの変身ベルトとフィギュア…二人はこれから立ち寄る玩具屋で買うプレゼントについて話をしながら園庭を歩いていった。

◇ ◇

(クリスマスだねえ…)

仕事を終えたひざしは特に感慨もなく煌びやかな街を歩く。以前は恋人やその時関係のあった異性と過ごしたが、単なるイエスキリストの誕生日である筈のこの日は女性達のあらゆる期待や思惑を強めてしまう。期待された『約束』の言葉を口にできなければ刃物ではなくターキーが飛んでくるだけの疲れる日。ひざしのクリスマスの認識はそんなものだった。
あと数時間もすれば25日が終わり、街はすべてを忘れたように年末そして元旦に向かって色を変える。正月休みを待ち遠しく思いながら、ひざしはイルミネーションが巻き付けられた痛々しい木々の間を歩いた。
すると、一件の玩具屋が目に入る。頭に浮かぶ教え子の顔。今年の人気のオモチャを眺めるのは園児達との話の種になる。ひざしが店の中に入ると、ちょうど入ってすぐの目立つ位置に仮面ライダーのベルトが陳列されていた。すると、翔太と同じ年頃の見知らぬ男児が小さなシューズを履いた足で駆けてきてそのベルトを眺め、首を傾げる。どうやら目当てのものではないらしい。

「おじさァん!!仮面ライダーギオウのベルトある?」

彼が大声を出して呼んだのはレジにいた店員の男だ。男はレジを出て少年の元にくると、目線を合わせてしゃがみ込んだ。

「ギオウのベルトはもう売れてなくなったよ、ごめんね。去年のライダーのならある」
「ええー…」

少年は大業に落胆した声を出したが、陳列棚においてある先ほどのライダーベルトをちらと見た。

「つけてみる?」
「うーん…。うん」

表情の乏しい店員はベルトを取り白いプラスチック製の留め紐を外すと、少年の腰に巻いてやる。スイッチを押すと、中心が青と白に輝いた。少年は嬉しそうに、お!、と肩を跳ねさせ、そのまま変身のポーズを取る。去年もライダーを熱心に観ていたらしく、懐かしそうに丸い頬がほころんだ。
すると若い母親がやってきて彼を呼んだ。

「拓海!欲しいのなかったでしょ。もう帰ろ」
「うん」

少年は店員の男にベルトを外してもらうと、母に駆け寄り店を出て行った。

「…『子どものオモチャでイキまくり!閉店までの強制絶頂100連発』」
「売れないだろ、それ」

ひざしが口にした妙な創作アダルトビデオのタイトル案に店員--相澤はすかさず突っ込む。イメージと不似合いな明るいオレンジ色のエプロンをかけた彼の表情は、先日よりも穏やかだった。

「『繁忙期だ』って言ってたけど、オモチャ屋で働いてたのかよ。」
「…年内までな。もう閉店する」

相澤が指を指す方向を見ると、クリスマスセールと書かれた装飾幕に年内閉店さらに20%オフ、と書かれていた。ひざしが店内を見回すといくつか商品のなくなった棚が虚空の口を開いていた。Wセールはしばらく前から行われていたのだろう、そしてクリスマスの今日はもうほとんどの商品がなくなってしまっている。

「…何でもアマゾンでポチ、の時代だもんな~」

米国の玩具屋チェーンが倒産した、というニュースをいつか見たことがある気がした。

「失業かー。どうすんの、あっちの仕事増やすの?」
「失業っつうか、ここはただのバイトだからな。向こうの撮影本数は増やさない。…これ以上増やすとしんどい」

言葉と同時に床にそらされた視線が気怠げな色を増した。ひざしは何となくそれに見とれた。顔立ちは整っているがはっと目を引く類いのものではない。長く無精に伸ばされた髪と髭でむしろそれは隠されているように見える。しかし、相澤消太は何か手を伸ばしたくなる、手を出したくなる雰囲気をまとった男だった。それを『色気』と呼ぶのはふさわしくないだろう、彼には色がないから。限りなく透明やモノトーンに近い存在感、色情や我欲にほど遠そうな顔。それでいてこの男は、人の性欲や嗜虐心を吸い寄せる危うさがあった。

「…ふーん。結構出てるもんな、月5、6本は撮ってるだろ?」
「調べたのか」

相澤は不快げに歯を見せ面倒そうな顔を作る。
ひざしはあの撮影を終えてから相澤消太をインターネット検索で調べた。出てきたのは数多くの陵辱ものや素人もののタイトルで、いずれも高評価。ネット上の書き込みを見ているだけでコアなファンがかなり多く付いていることも分かった。
いわば相澤はゲイ向けのAVでは売れっ子の一人だった。月の手取は相当なものだろう。
なのになぜ玩具屋でバイトをしているのか――ひざしはそれが疑問だった。自分が保育士をしている理由と全く同じ、あくびが出るほど単純で好ましいものかもしれない。いずれにせよ、その話はここでの立ち話ではなく別の場所でしたかった。

「な、せっかく再会したことだしこのままクリスマスパーティーでもどう?繁忙期も今日で終わりだろ」
「年末までに店を閉める片付けがある」
「んなのチャチャッと終わらせてさ!…電車の中でセックスまでした仲じゃん?飯くらい」
「あれは仕事だ」

相澤は眉間の皺を深めてひざしを一睨みすると、手に持っていたベルトを陳列棚に戻し背を向ける。ひざしは長い足で一歩二歩と間を詰めると、相澤の前に躍り出た。

「頼むぜ、人助けだと思って!実は今日パーティーの予定だったけど友達が全員彼女が出来たとか腹痛とかでキャンセルになっちまって、山盛り頼んだオードブルの処理に困ってんのヨ。捨てるのも勿体ねーし、うちに食いに来てよ」
ひざしはメモを取り出すと自分の住所を書き、足を止めた相澤の手に握らせた。

「それとも他にディナーの約束が?」
「……」

碧の瞳に返される呆れた眼差し。

「じゃ、俺先帰って準備しとくから。ドリンクはバイユアセルフで」

待ってるぜ、と笑いかけても相澤の眉間に寄った皺は解けなかった。心の声をそのまま読み上げるなら恐らく『なんだコイツは』といったところだろう。
しかしひざしは相澤が必ず来る気がしていた。玩具屋のドアを抜けた途端、12月末の冷たい突風に悲鳴が上がりそうになる。心は妙にハイになっていた。

(紙受け取った以上必ず来る、あいつは)

住所を書いた紙を握りしめた相澤の手が脳裏にちらつく。きっと至極面倒そうな顔をしながら酒の入ったコンビニの袋をぶらさげ尋ねてくる――あの男はそんなタイプな気がした。会ったばかりなのに、性質が手に取るように分かった。まるで前から知っている友人のように。

ひざしはイルミネーションが目に五月蠅い路地を歩きながらポケットからスマートフォンを取り出すと、宅配オードブル、と調べ、表示された電話番号をコールする。

「これからパーティー用のオードルブルとターキーを山盛り頼みたいんですけど…ドーンと適当に!ええ、一晩かかっても二人じゃ食いきれない量を」

 

 

 

 

 

 

 

 

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