相澤は唇を軽く噛み、ソファに横たわったままドアを見つめる。ツナギは下着ごと太ももまで下ろし、天井を向いて立ち上がったペニスまで晒した半裸の状態だった。
この姿を誰かに見られでもしたら舌を噛んで死ぬしかない。校長室にノックもなく無遠慮に踏み込んでくる人間はいないだろうが、まだ夕方の校舎には生徒も、同僚の教師も、多くが残っている。
「気が散ってるみたいだね」
校長室の前を通る人の気配に意識をめぐらせていた相澤に、根津は声をかける。巧みに扱かれ、限界まで性器を張り詰めさせてもなお緊張を解かないその姿に苦笑していた。先走りのじわりと溢れたその先端を撫で回せば声を殺して反応するほど昂ぶっているのに、と。
「君はいつも気を張ってるからなあ。私はもっととろとろになるまでリラックスしてほしいんだけど」
「この状況を終わらせて頂ければ俺はリラックスできます…」
根津は相澤の言葉に構わず、自らのベストの中に手を入れると、
「これを使おう」
とピンク色の楕円状の機械を取り出した。タマゴ大の大きさのそれがぴったりと根津の身を包むベストのどこに入っていたのか?その疑問もなくはなかったが、それ以上に身に迫る危機に気付いた相澤の口元が引きつる。
「無理です」
「ハッハ!大丈夫、これは知り合いの科学者が作ってくれたんだけどハイスペックな代物でね。ほら」
根津は自分の手に合わせて作られたマイクロサイズのリモコンのスイッチを押す。ローターはうねるように怪しく震えた。
「それにローションも内蔵されてるのさ。補充式でね」
根津がスイッチを切り替えると、小さな穴が開いているのかピンク色のその表面がとろりと濡れ始めた。合理的だろ?と朗らかに言う根津に、相澤は渋面を作る。
制止のために白い毛並みを捕まえようとした腕は、宙を掻いた。ツナギの中に再び潜り込んだ根津は、神業めいた早さで濡れたローターを相澤の秘部に押し込む。ふいを突かれて力の抜けたそこは、括約筋のガードもなく異物の進入をあっさりと許してしまった。
「あッ…!」
思わず発してしまった裏返った声を恥じ、相澤は歯を食い締める。間髪居れずスイッチを入れられたローターは腹の中で唸りながら震え始めた。不快であるはずなのに、その微弱な振動は得体の知れない感覚を揺り動かしてくる。
相澤は呼吸を乱しながらも理性で抗うよう眉根を寄せる。しかしその瞬間、ローターが自ら奥に入り込んできた。滲んだ冷や汗と共に見開いた目が、根津を凝視する。
「中に人工知能が入ってるのさ。学習能力があって、反応する君の体温上昇、筋肉の収縮を分析しながら一番イイところ、一番イイやり方を探して刺激してくれる。それを覚えられちゃうと大変だよ?」
「っ…とめて下さい、校長…」
そう吐き出した歯がかちかちと鳴り、自分が震えていることに相澤は気づく。ローターの丸い先端は相澤のふくらんだ前立腺を捉え、その過敏さをいたぶるようにゆっくりと回転していた。
「そんなに苦しそうにしないで。私は別に君の我慢強さを試したいわけじゃない。与えられる快楽に身を任せて、気持ちよくなりなさい」
ね、とやさしい声色で付け足して、根津は苦悶の皺が寄った相澤の眉間を撫でた。柔らかな肉球に触れられ、汗ばんだその額から少し力が抜ける。根津は歯をかみ締めて声を堪えている薄い唇にも触れる。きめ細やかな毛の生えた指の裏側でくすぐるように撫でると、固く閉じ合わさっていたそれはほだされる様にかすかに開かれ、うす赤い血色を増した。
根津は満足そうに微笑む。校長という役職とは無関係に、相澤が自分に弱いことは分かっている。
「…っ……ぁ、…は…」
相澤が悩ましげに息を漏らす。黒々とした髪は乱れ、汗で湿った肌に張り付いていた。ローターに過敏な部分を間断なく刺激され、薄く開いたままの目は焦点が定まらない。ドライアイで日ごろ血走った白目は快感で濡れ、ピンクがかった光を帯びていた。
「気持ちいい?」
問いかけにちらと視線を動かしたものの、相澤は黙っていた。はあはあと熱い呼吸を繰り返しながら押し寄せる刺激を受け止めるので精一杯だった。根津は相澤の耳に手を伸ばし、柔らかな毛並みで尖った耳の上部から耳たぶまでをさする。途端に相澤がびくりと体を揺らし、身をすくめる。
「耳が弱いんだね」
耳も、なのかな?根津はそう呟きながら、だらりと力なく腕を垂らす相澤の肩を乗り越え、胸の前にしゃがむ。厚みのある雄らしい胸筋に対し、色の薄い小ぶりの乳首は可憐だった。その尖った先端を、肉球で芽を摘むようにつまむと、相澤が、ア、と上擦った声を発した。
ぺたと肌に吸い付くような肉球に突起を弄り回され、敏感な乳首ごとやわやわと揉まれる。校長の愛撫は体内で容赦なく前立腺を押し上げてくるローターの刺激と重なり、相澤の意識をぐずぐずに崩した。
限界まで張り詰めた性器からは先走りが溢れ、今にも弾けそうだった。指先まで走る言い知れない焦燥に、相澤は汗で湿った前髪を掴み握り締める。
「く、っァ…、校、ちょ……、もう…っ!」
「いいよ」
ぴんと張り詰めた薄紅の突起を、根津の丸い指が抓りあげる。瞬間、相澤のペニスから精液が跳ねた。押し寄せる快感の波の大きさに意識が白らむ。前立腺から脳幹まで駆け上がったぞくぞくした痺れにすべてが浚われていく心地がした。
「たくさん出たね」
根津の嬉しそうな声が相澤にはどこか遠くに聞こえた。ぼやける視界の端に、力なく横に倒れてもまだ精液を垂らし続ける自分の性器が見える。視覚を通じて自分の太ももが痙攣したように震えているのにも気づいた。今の相澤にできるのは重たいまぶたを辛うじて開き目を動かすこと位で、あとは指一本さえ動かせない気がした。感じたことのないほどの快感の余韻が、それほど気怠く全身に圧し掛かっていた。
「んっ!!??」
相澤が閉じかけていたまぶたを大きく開く。突如走った鈍く重たい刺激。考えたくはなかったが、ローターがまた腹の中で動き出したのが分かった。デスクから持ってきたウェットティッシュで濡れた相澤の腹を拭い始めた根津は、射るように向けられた驚愕の目に答える。
「データを集め終わるか充電が切れそうになったら勝手に出てくるから。もう少し楽しむといいよ?」
「はっ?…あ…!…もう…、止め、……は、ァ………っあ、あ……痺れ、る…クソ……っ」
達したばかりの充血した前立腺をローターの固い先端に攻められ、相澤の体から汗が噴出す。思考を束ねる理性が飛び、自分が何を言いたいのか、どうしたいのか分からなかった。
ローターは一度相澤を絶頂に追いやったことで多くのデータを得たのか、むしろ先ほどより勢いづいて身をうねらせる。止めてほしいはずなのに、相澤のペニスはまた赤みを持って勃ち上がり、喘いで閉じられない口からは涎が零れた。いっそ殺してくれ、思考の端でそう思いながらも、相澤は自分を抑えていた何もかもを放棄した。
「重たいよ、相澤君」
ツナギを着直して捕縛布を巻いた直後に集中が途切れ、胸元で布の乱れを直してやっていた根津の頭上に相澤の顎が乗る。頭だけではない、体全体がだるく、今の相澤にとってはソファに座った状態から立ち上がるのも酷く億劫だった。
「ひげが痛い。ねえ、相澤君」
二度目の小言に仕方なく相澤は頭を上げる。根津は相澤のあご髭が刺さった自分の頭頂部を撫で、自慢の艶やかな毛並みを整えると可愛らしく小首をかしげて尋ねた。
「怒ってるの?」
その打算的な仕草を、相澤は覇気のない半眼で見つめる。彼の言い分であればすべては身を挺して生徒を守った自分への『ねぎらい』であり、その内容がどうであれ翻弄され乱れてしまったのは自分。根津が自らの行動に疑問を抱いていないなら尚のこと、過ぎたことに文句をつけることはひどく不毛に思えた。
そう結論付けた相澤は、掠れた低い声で、いえ、と答えた。ただひとつ、疑問がある。
「…校長はねぎらいと称して他の教師にも同じことを?」
膝からピョンと効果音をつけて飛び降りた根津に、ゆっくりと立ち上がった相澤は尋ねる。
「まさか、してないさ」
部屋の入り口に向かって歩きながら、さも当然のように根津は答える。その答えは相澤を安堵させたが、腹の中で渦巻く疑問は消化できないままだった。歩きながら細い眉を寄せ黙り込むその顔を、根津は見上げる。
「相澤君は特別だよ」
は?と意味を計りかねて聞き返した相澤の足は、もう校長室の外に出ていた。疑問符への答えはない。
二人を隔て自動で閉まりゆく扉の向こうで、根津が小さな手を挙げた。相澤がこの部屋を訪れたときと同じように朗らかに、つやつやとしたピンクの肉球を見せて。
「またおいで?」
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