緊縛灯夜(マイ相短編2本)

hrakマイ相

※マがSッ気

 

 

 

ミスをした、という一言で表すにはあまりに重い結果。会敵で抹消の発動が遅れ、その日組んでいた中堅ヒーローに瀕死の重傷を負わせてしまった。敵察知の遅れ、意思疎通の失敗、リカバーの不順…考えながら活動していた今日、相澤はつまらぬミスで自分も足の腱を切った。

 

「…。けが人にどういう仕打ちだ、これは」

太い革ベルトが何本も相澤の腕に、脚に巻かれ、鎖で繋がる背の輪に引っ張られて一切身動きができない。かかとが尻につくほど折り曲げ開かれた脚にぐるりと巻き付く黒革の蛇達は、相澤が身じろぎしてもみしりと音を立てるだけでびくともしなかった。全裸でベッドに転がされた芋虫以下の惨めな姿。

「足の腱切れてるし消太を可愛がるいい機会だと思って、縛ってみた」
「鬼畜野郎」

ひざしはふ、と笑って取り出した煙草に火を点ける。先端で炎が静かに息付き、煙が金色の睫毛に、髪にからんで流れていく。

「最近お前死ぬほど働いてるんでまともに話す暇なかったしさ」

うまそうに煙を吐き出したひざしの視線が消太の体をなでる。自分を見上げるかすかに眉の寄った表情、鍛えられた筋肉の膨らみで革に反発するも抗えぬ太もも、その肉が重く沈むシーツの波。いい眺め…と心地よさそうに笑ったひざしの唇が煙草の端を吸う。声が個性のこの男が年に数回しか喫さない嗜好品。その特別な日の格好の肴にされていることに、消太は苛立つ。

「これが話をする体制か?」
「エッチなことはあとで」
「そういうことを言ってんじゃねー…」

軽く笑ったひざしの手が消太の髪に触れ、温かい手のひらが後頭部の丸みを滑る。何度も、ぽん、ぽんとあやすように軽いリズムで繰返される戯れ。煙草を咥えたひざしに恋人というよりは子どものように撫でられ、消太は露骨に鬱陶しげな表情を示した。

「なんだ」
「別になんでも。可愛がるって言ったろ」
「…慰めはいらん。お前に心配されなくてもメンタルの調整は1人でできる」

ひざしがくくと笑った。

「立派だねーお前は。いつもギリギリしながら誰か助けるために生きて、そのために一分一秒無駄にしないでさ。ミスったら改善策が出来上がるまでずっと考えてる」

「普通のことだろ。ヒーローを生業にしている以上褒められることじゃない。助けを求める全員を救えてるわけでもねー…だがミスを改善できなきゃそれだけ人が死ぬ。それが出来ねぇやつはヒーローやる資格がない」

語尾とともにわずかに視線を落とした消太に、まあそうだな、とひざしが返す。

返しながら、どこから取り出したのか手のなかのガムテープをビッと破いた。

「はっ?お、」

おい、という2文字さえ発せずに塞がれた口。容赦なく貼り付けられた粘性のテープで、全身を拘束された消太が自ら動かせるのは両の目玉だけになった。

「可愛がろうと思ったけどお前の合理的返しを聞いてたら面倒になった」

消太が目を見開くと、ひざしは笑みを浮かべたまま灰皿に煙草を押し潰す。紫煙の香りをまとった手はひらりと消太の視界に踊り、唯一自由が許された両目を覆う。

「お前のさ、最適解が見つからないと不安でたまらなくなるとこ…昔から好き」

そう言った唇が耳に触れ、薄い肉端を食んだ。理を詰めて自分を殺すなよ?と吹き込まれたのを最後に、歯を立てられ、言語のない淵へ落ちる。