ニスロクがショタすぎるニスフル短編2本(後半はR18、別人過ぎ注意)
◆よいこはねんね
…風邪はさぁ、寝なきゃ治らないんだよ、という呆れを含んだのんびりした口調と共に頭を撫でられ、ニスロクは喉奥を無言で焦がした。
ニスロクの体調は数日前から今ひとつだった。喉がイガイガ、鼻水が出る。ヴァイガルドに来て十年、こんなことは初めてだったので一時的な気の乱れだろうと結論付け、野を駆け、山を駆け、食材を調達していた。そして今朝、幻獣をかついで入ったアジトの厨房で倒れた。
「純正メギドも風邪こじらせるんだねぇ」
アジトの空き部屋のベッドの上。ベッド脇に座ったフルフルの手がニスロクの額に滑り、体温の高さを確かめる。パイでも作った後なのか、甘いバターの匂いのする手だ。
「…問題ない。ヴィータの病など貴様に心配されるまでもなく直に治る」
百年以上前に『人の世話になるのはきらいだ』と言っていたバナルマの頃の表情をひさしぶりに思い出し、フルフルは苦笑する。
「君が一向に寝ないっていうから私が呼ばれて来たんだよぉ…」
倒れた後ユフィールに診断され薬を飲んで一息つくと、何人かが代わる代わるニスロクの元へ見舞いに来た。ソロモンは気遣いの言葉をかけ、アガレスも鼻のかみ方を教えてくれ、ダゴンは「たくさん食べて体力つけなきゃね!」と山盛りの焦げたパンを置いていった。アミーがそれを一旦片付け、「消化にいいもの作るわね」と出て行った。彼女は自分と入れ替わりにフルフルを呼んだのだった。
「眠ることなど…すぐにでも厨房に立ちたいのをこうして我慢しているのだ、治らんはずがあるか。…それより狩ってきた幻獣の肉の鮮度が落ちる、そちらの方が問題だ。フルフル、貴様が料理しろ。調理方法は…そうだな、燻製にして春らしく芽吹いたばかりの野草をアクセントに使うのはどうだ」
「はぁ~。世話が焼けるなぁ~~…」
フルフルは大きな溜息を吐くと、寝そべっているニスロクの胸に触れ、ポン…ポン…と一定のリズムを落とし始めた。
「…なんだ、それは」
「ヴィータの子どもはこうやったら寝るんだよ」
「私は子どもではない」
「そうだねー」
鼓動よりもひどくゆっくりとしたリズムで落ちる手の柔らかさ。ニスロクは眠くはならなかったが、幻獣の調理について考えるのを少しだけやめた。フルフルはやがて投げやりな声で羊を数え始める。
「ひつじがいーっぴき。ひつじがにーひき…」
「なんだそれは…」
「ヴィータの子どもはこうやったら…ふあ…」
フルフルはニスロクの胸をポン…ポン…と叩くのをかろうじて続けながら、空いた手で目をこする。羊を数える声はむにゃむにゃと眠たげだ。ニスロクはしばし黙ってから、幾分か穏やかな琥珀色の目をフルフルに向けた。
「その羊をどうする」
「…ふぁ…?」
「ステーキにするのか、赤ワインで煮込むのか…。それだけの頭数であれば料理方法も工夫する必要があるだろう、客を飽きさせてしまうからな。同じ食材でいかに多彩な料理を提供し客を満足させられるか…面白い課題だな」
「……」
フルフルは唐突にニスロクの胸に頭を落とした。面倒さにすべてを放棄し、眠りの世界へ逃れたのだった。
「…おい…貴様私を寝かせにきたのではなかったのか?! …起きろ! 羊はどうする!」
目の前で閉じた瞼はぴくりとも動かず、規則正しい寝息を返され、ニスロクは舌打ちする。胸の上に頭を乗せて眠られては身動きがとれない。いや、とってもいいが、風邪で鈍った嗅覚にふわふわと入り込む甘いバターのような匂いが気を萎えさせた。ニスロクはしばらく羊料理のレシピを考えていたが、やがて瞼の重さに目を閉じた。
◆純心
「ぁ、…あ…ン……っ、ちょっと待って…」
フルフルの秘所を愛撫していた指がピタリと止まる。ベッドの中のニスロクは厨房でのいねむりを叱る姿と程遠く、静かで、大抵の場合フルフルの言葉を聞き入れた。明かりを落とした寝室にしんと落ちる沈黙。濃い睫毛に縁取られた目がじっとフルフルを見下ろしている。
「んん…ごめん、もう大丈夫…」
「どうした」
「う~ん…なんでもないよ」
フルフルは火照った頬から、ぷぁ…、と息を抜いた。なんと言ったらいいか分からなかった。的確に、ねっとりと指で与えられる快感がつよすぎて困る、耐えられない――。素直にそう言えば「それの何が悪い?」と真顔で返されそうだと思った。
フルフルの「なんでもない」を言葉通りに受け入れることにしたらしく、金色の目を静かに瞬かせたニスロクは柔らかな粘膜につつまれた指の動きを再開する。骨の太さを感じるしっかりとした指が内部の凹凸をなぞりフルフルが感じる一点をふたたび攻め立てる。分かられすぎて困るなぁ…、とフルフルは思う。料理の勘所のように善いところも触り方もすべてを知られている。少し開いた足の間、掻き混ぜられちいさな水音を立てるそこからこぷりと泡を含んだ粘液が垂れ落ちる。
「ぁ、…、ン……だめ…だ、……ゃ、あ!…っ」
小さな体を震わせて達するフルフルを、ニスロクはじっと見下ろしていた。沿って浮いた背がふたたびシーツに落ち、薄暗闇のなかで白い胸がかすかに揺れる。快感の白い海に吐息がこぼれる。つかのまの絶頂からフルフルが戻ってきてもなお、ニスロクのまなざしはフルフルの顔の上に注がれていた。
「ぁ、ー…、…………はぁ…………ねえ、…そんなに見られると恥ずかしいよ……」
「…差し障るか?」
彼にしてはどこか魅入られたようなぼんやりとした口調が返る。
差し障るか、という問いにフルフルはどう答えていいものか、また「うーん…」と唸った。彼の考え方は料理を提供している時と同じなのだ。客が満足するか見ている。満足するまで料理を出し続ける。客の舌と胃と心の隅々までを満足させつくす常人にあらざる熱量を向けられると、正気を保てない。気持ちいいのは好きだが、苛烈なのはしんどいし、事後にくたくたになるのは少し勘弁してほしい。
「んん…ダメじゃないけど……、っ」
言いかけて開いていた口に舌が差し込まれる。ダメでないのなら構うな、と長く器用な舌が言外に言う。ぬるりと絡み取られ、何を言おうとしたのか段々とどうでもよくなる。唇を食まれ舌を吸われ蕩けると、またぞっとするような熱が閉じた秘所に訪れた。たまらず脚をすり合わせる間に胸にニスロクが触れる。赤く色づいた先端が疼きはじめ、そこも触れてほしかったのだと強く思い知る。このまま流されればあともう何度か一方的に絶頂に追いやられそうだ。何度も達したあと、指いっぽん動かすのも気怠くて仕方ないほどに弱った体に猛った陰茎を受け入れることになる。いつものように。フルフルは慌てて唇をいったん外した。私ばっかりじゃなくて君も、とか何とか言おうとした。だがニスロクが低くつぶやいた「…好きなのだ」という声に遮られた。
「な、に?」
「…貴様が、私の手で善がる姿が」
「…そうなんだ」
ニスロクはこくりと頷いた。自分の本心を吐露した反動のように、もう黙りこくってフルフルの唇を吸った。
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