付き合ってないふたり(ニスフル短編2本)

mgdニスフル

お題ガチャの「ぱちっと目を覚ましたら、開けた視界に受けがいなくてふらふら寝室から出ていくニス。フル特製スペシャルトーストの目玉焼きを焼くフルの肩に、寝ぼけながら頭をすりつけにいく」をSSにしたもの

※現パロ設定 付き合ってない

 

 

普段ほとんど眠らないニスロクは寝過ぎると体調が芳しくなくなる。

フルフルは長い付き合いでそのことを知っていたが、だからといって特に気遣うわけではない。
――だって、私が呼んだら渋々とはいえ大人しくベッドに入ってきたのは君だし。寝かしつけようとしたら『明日のレシピの考案が終わっていないのに寝てなどいられるか』と言ってたのに案外早く寝ちゃったのも君だし――
たっぷり眠ることが一番のフルフルは、ニスロクが自分の睡眠に巻き込まれやりたいことを出来なかったとしても、罪悪感もない。体調がおかしくなるのはちょっと気の毒だ…とは思ったが、今はそれよりも目の前の目玉焼きに集中していたので。フルフル特製スペシャルトーストには黄身の中心が少しトロッとした、色艶のいい完璧な仕上がりの目玉焼きが必要なのだ。外は明るく晴れ、今日のフルフルは普段よりやる気に満ちていた。昨晩午後七時からぐっすり眠ったおかげだ。
ギィ、と床がきしむ音。フルフルの住む古いアパートは、体の大きなニスロクが歩くとこうして不満げな音を立てる。ニスロクの足音はひどくののろのろとしており、不調はあきらかだった。フルフルはフライパンから目を離し、ちらと振り返る。台所の入り口で、髪を解いたままのニスロクが半眼で立っていた。
「自我が…」
また言ってるなぁ、とフルフルは思う。ニスロクは沢山眠ると自分がよく分からなくなるらしい。起きている時はいつも料理のことを考え、それをいかに最高の形で仕上げ客に提供するかを考え、それによって自分の器を満たしている。ニスロクの言葉で言えば自我を自分の思う通りに制御できている状態。なのに眠りは無遠慮に意識も情熱もさらっていく。自我は暗闇に飲まれる。
特に長く深く眠った後、ニスロクは軽い混乱状態になるようだった。
ニスロクは整った眉間にしわを寄せ、もう一度「自我…」と呟きうつむいて眉間を抑えている。
「大変だねぇー」
フルフルはもうニスロクに背を向けて一枚目の目玉焼きを完成させ、綺麗にトーストの上に乗せた。コン、と小気味のいい音を立て次の卵をフライパンに落とす。目玉焼きの周りにシーフードと茹でたブロッコリー、最後にタルタルをかけてトースターで1分温めれば特製スペシャルトーストは完成なのだ。だから目玉焼きも1分ぶんの過熱を引いて焼いている。今日のフルフルは冴えわたっていた。
「今日は揚げ焼きにせんのか…」
のし、と肩に乗っかる重み。項垂れたニスロクがフルフルの華奢な肩口に頭を乗せていた。彼はいつものフルフルの好みと違う目玉焼きに焼き方について尋ねつつ、料理人としてのフルフルの生気に自分を取り戻そうとしているようだった。
「タルタルと喧嘩するからねぇー。今日の目玉焼きはさっぱり」
「そうか…いい判断だ…」

 

 

 

 

タイトルとURLをコピーしました